アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎と失明
アトピー性皮膚炎(AD)の合併症の中で、視力障害はQOLに与える影響は計り知れない。経験した3例について述べる。
(1) 初診:昭和51年、7歳、男児。全身のADで、特に顔面が著名。目の周囲は一部潰瘍状態であった。症状は不変であり、10ヵ月後に白内障、1年半後には両眼に病状は進行し、視力はほぼ0となった。鍼灸師の学校に転校した。ステロイドの不十分な使用が原因のひとつかもしれない。
(2) 初診:平成6年、5歳、男児。ADは顔面、四肢の屈側部、背中の炎症がある程度治まっても、授業中は人目もはばからず定規で背中を掻いていた。中3の時に読んだ漫画でステロイドの副作用を誇張した記事を読んでから、Mild のステロイド外用薬を説明しても、一切受け付けなくなった。顔面がかゆくなると顔や目をたたく動作が急増した。抗ヒスタミン薬は使用できるものは20数種、使用したが、かゆみに対する効果は不十分であった。顔面の皮膚炎を気にして、不登校となった。
プロトピック軟膏が使用できるようになり、何とか使用させることができるようになった。その後、顔面、特に目の周囲の炎症は治まった。その結果、顔面の赤みが減少したため、不登校も激減した。また卓球部にも復帰し、副キャプテンとして活躍した。
しかし、1年後、ITでプロトピックに関する記事を読み、その使用を拒否した。顔面の炎症は増悪し、かゆみのため、顔をたたく回数が急増した。
昨年、視力低下を訴え、眼科で白内障と網膜剥離を指摘され、某大学病院眼科で手術となった。
家庭環境は複雑で、両親は不仲である。ADの本人の性格は元来、頑固で自分の意見はなかなか曲げない性格に加え、マスコミの影響が強く、いくら説明しても、治療薬に関して本人の納得が得られなかった点が悔やまれる。
(3) 初診:平成18年、32歳、男性。軽症―中等症のAD. 本人がたまたま眼科を受診した際に、白内障を指摘された。小児期からステロイド外用剤を使用していたため、この数年、保湿剤のみ使用していたが、目の周囲の炎症が悪化してきた(アレルギー性眼瞼炎、アレルギー性結膜炎)ため、来院した。
視診にても水晶体はやや白濁している。手術の予定。
本人の不安感に伴う治療不足と思われる。しかし、前2例に比べると目の周囲の炎症、他の部位のADの程度は軽い。平成18年以前は他院を受診していたため詳細不明(薬の内容を詳しくは説明されていない)。
アレルギー疾患の各病気を説明していきます。