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アトピー性皮膚炎



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 治療の基本

 ①スキンケア


第一のポイトンは、ドライスキン及び皮膚バリアー機能の修復です。
それには、まず、「皮膚の汚れを取りいつも清潔に保つ」ことです。人の皮膚は予想以上に汚れがついています。
皮膚の汚れには、「体の中からの汚れ」と「体の外からの汚れ」があります。
体の中からの汚れは、新陳代謝に伴って、体の中から解離された細胞(あかなど)や汗です。
体の外からの汚れは、空気中のホコリ、チリダニ、細菌などです。
使用するせっけんは、無色無臭の天然系の固形せっけん、シャンプーは低刺激性のものがお勧めです。殺菌成分の入った薬用せっけん、においの強い化粧せっけんなどは刺激が強いため控えましょう。また、入浴時、ナイロンタオルなどでゴシゴシするのも控えてください。そして、洗いすぎに注意しましょう。洗いすぎは必要な脂分まで落としてしまいます。夏の暑い日以外は、入浴は1日1回、夏場でもせっけんを使うのは1日1回とし、あとはシャワーで汗を流す程度にします。
さらに大事なのは、洗ったあとの「保湿」です。
保湿剤を塗るのは、体から失われた水分や脂分をそのつど補い、肌の潤いを正常に保つことと皮膚から水分が逃げないようにするため膜を作ること、そして、バリア機能の保護のためです。
そのため、こまめに保湿剤を塗るのが大切です。特に、入浴後の保湿です。角質から水分が逃げないうちに肌に封じ込めることがポイントです。
 

②チリダニ対策


従来皮膚は体をつつむただの皮と思われていましたが、近年の研究で単なる皮でなく免疫細胞がその中にいて外から進入してくる物質、例えばチリダニをキャッチしてその情報を体の免疫センターに伝え、アレルギーを誘導することがわかってきました。
チリダニに体が反応しているかどうかを調べるには、血液検査や皮膚テストがよく行われます。
これは体の中のチリダニに対する抗体を調べるものです。さらにパッチテストを行い2日後に皮膚反応を調べる検査も行われます。対策は「家庭でできるアレルギー治療・チリダニ対策」をご覧ください。
 

③食事療法


血液検査や皮膚テストを行い、これらを参考にしながら特定の食物と症状の間に関連があるかどうかを詳しくお聞きします。この検討により疑わしい食物が原因として疑われたら食物除去、食物誘発テストを行います。ここで注意しなければならないのは血液検査や皮膚テストはあくまで補助検査であるということです。血液検査や皮膚テストだけで食物アレルギーを診断して食物除去をしてはいけません。
食物除去、食物誘発テストの例を「卵」でご説明します。
除去テストは1週間から10日の間行います。この期間中は卵そのものだけでなく、卵を含む食品は一切禁止です。特に既製品の場合は表示を必ず確認して、卵を含む食品は不用意に食べさせないようにしましょう。この除去テストを行っている期間に皮膚症状、痒みの変化を観察します。食物アレルギーが皮膚以外の症状が出る場合、例えば下痢、嘔吐等が疑われる時はこれらにも注意して観察します。
もしも、この除去テストで症状が軽くなる時は、次に確認のための食物負荷テストを行います。除去テスト中に禁止していた食品を注意しながら少量食べさせます。この時に食べさせる量と間隔は慎重に決める必要があるので、必ず専門医と相談してください。
この食物負荷テストに引き続き、念のため再度、その食品を除去して症状が前回同様に軽くなることを確認すれば、判定はさらに確実になります。
食物除去、食物誘発テストはおわかりになったように手間のかかるものです。よく理解してから専門医と相談して充分に準備してから行いましょう。このように手間のかかることをする理由は、アトピー性皮膚炎は同じ食生活、同じ生活環境のもとで生活していても皮膚症状に良い時と悪い時の波があります。この際サイクルが原因食物を見つけ出すのを困難にしています。そのためこのように手間のかかることをする必要があります。
食物除去テスト、負荷テストにより原因の食物が明らかとなった時には除去食を開始します。
除去食の実施においては母親の手間がかかるだけでなく家族の理解と協力が必要です。
除去食には卵を例に取ると,卵料理そのものだけでなく卵を含んだ食品も除去するのを完全除去といいます。一方,卵料理は禁止するけれども、卵を含んだ食品は少量許可するのを不完全除去といいます。実際のやり方についてはお問い合わせください。
食物アレルギーかどうかの診断は容易ではありません。以上のように手間と時間がかかります。
 

④内服薬


皮膚の痒みには抗ヒスタミン薬やヒスタミンの働きを抑える抗アレルギー薬が用いられます。
これらの薬で痒みがおさまらない時は、その患者さんの痒みがヒスタミン以外の物質で引き起こされている場合が多いといえます。現在のところ痒みを起こすヒスタミン以外の物質に対する治療薬はありません。製薬メーカーが鋭意開発中です。
食物アレルギーの内服薬としては経口(内服薬)のインタールがあります。
これは食べる15-20分前に内服しておくと食物アレルゲンが消化管から体内へ吸収されるのを予防するといわれています。万能ではないのでケースバイケースで使用の検討をします。
 

⑤外用薬


ステロイド軟膏やステロイドクリームはステロイド外用薬と呼ばれます。
このステロイド外用薬なしにはアトピー性皮膚炎の治療はうまく行かない場合が多いといえます。しかしステロイド外用薬の誤ったまたは不適切な使用により、患者さんが多大の副作用を経験し、その結果ステロイドは悪い薬であるというような印象が広まってしまったことも事実です。
ステロイドホルモンは人が生命を維持するためには必要不可欠のホルモンであり、人間の体の中で副腎という小さな臓器により24時間絶え間なく生産されています。
例えば、交通事故で大量に出血した時の救急処置としては強心剤やステロイドホルモン薬の注射を行います。この時、強心剤だけでは生命を維持することはなかなか難しい場合が多いのです。
また、ステロイドホルモンは飲み薬としてリューマチ性の病気、血液の病気および腎臓の病気などにおいてよく用いられます。これらの場合、内服薬として用いる時は症状がおさまってきたら、細心の注意を持ってステロイド薬を減量します。
しかしながら、皮膚にこのステロイド外用薬を用いる時には医師の説明が不十分なせいか、皮膚の症状が良くなるとすぐやめてしまう場合が少なくありません。ステロイド薬を使用したら、徐々に減量するという点が最も重要であるといえます。
ステロイド外用薬は基本的には対症療法です。
ですからステロイド外用薬を使い始めると同時に、アトピー性皮膚炎の原因を可能な限り追求する必要があります。もし見つかった場合にはこれらの原因は、多くの場合は複数ですが、それらに対する対策をしっかり立てる必要があります。
どんなに注意してステロイド外用薬を減量してきても、症状が再燃してしまうことも時に見られます。どうしても原因が分からないときには、慎重に少しずつ時間をかけて減量してくることがポイントです。また、ステロイド薬には強さの段階があるので、今自分はどの強さのステロイドを使用しているのか良く理解しておく必要があります。
 

⑥食生活の改善(油の問題)


第二次大戦後、日本人の食生活の中で最も大きく変化したものはなんでしょうか?
それは動物性脂肪の摂取量が著しく増加したという点です。油の摂取量はたんぱく質の摂取量の増加をはるかに上回っています。
動物性脂肪の摂取のしすぎはどのような病気につながるでしょうか?
良く知られているのは心筋梗塞、高コレステロール血症、リューマチ性の病気などです。しかしながら近年、アレルギーの病気についても同様であることが分かってきました。
動物性脂肪およびリノール酸は摂取しすぎると上にあげたような病気が起きやすくなります。
オリーブ油はこれらの病気に対して直接の影響はありませんか、食べ過ぎるとカロリー過剰から肥満へとつながります。
一方、エイコサペンタエンサン(EPA)、ドコサエキサエンサン(DHA)、α―リノレン酸は、これらの病気の予防に対して有用であることが分かってきました。
エイコサペンタエンサン(EPA)はイワシなどの青身魚、ドコサエキサエンサン(DHA)はマグロの眼の後ろの脂肪の中、α―リノレン酸はシソ油や、えごま油などに含まれていることが知られています。
DHAは数年前にこれを摂取すると赤ちゃんの頭がよくなるというニュースが流れ、ドコサエキサエンサン(DHA)を多量に含むマグロのでの眼の後ろの脂肪を売っている魚屋さんに若いママたちが殺到したこともありました。
戦後日本人は魚の摂取が大幅に減り、逆に動物性脂肪の摂取量が著しく増加ました。
この傾向は特に若い人たちに著名です。小学生、中学生、高校生の最も好きな食べ物はハンバーガー、フライドチキン、フライドポテト、アイスクリームなどです。これらは動物性脂肪を多量に含みます。ファーストフードや外食の増加とともにこれらの動物性脂肪の摂取量をも著しく増加する傾向を示しています。これらの動物性脂肪多く含む食品を常食していると、もちろん1回や2回ではアレルギーになるわけではありませんか、体質が徐々にアレルギーを引き起こしやすいものとなって行きます。
 

⑦添加物の配慮


添加物とアレルギーの病気については、あまり多くのことが知られていません。
添加物でよく知られているのはタートララジンという黄色い色素です。これは食べた後に舌が黄色くなったりオレンジ色になったりするような色素です。アスピリン喘息の人はこのタートラジンという色素を食べるとアスピリン喘息と同じような症状が出ることがあります。このような極端な場合以外には添加物とアレルギーと関係についてはあまりよく因果関係は解明されていません。
最近 亜硝酸塩といって食物の酸化を防止する化学物質がサランラップの封を切ったり、ワインの栓を開けたりするときに空気中に揮発し、それを吸い込むと気道が刺激されて咳が出たり喘息発作が出る可能性のあることが指摘されました。
数年前のデータでは日本中で消費されるさまざまの添加物、例えば酸化防止剤、色素、乳化剤、抗生剤などなどの総量を日本人の人口で割ってみると1人当たり1日数グラム食べているということが報告されました。1日に数グラムということは1年間に1キログラムくらいは添加物を食べている計算になります。人間の肝臓は解毒作用が非常に強く、また予備能力もあるため肝臓を切り取っても3分の1残っていれば生命は維持できいるといわれています。しかしながら小児のころから大量の添加物を一生の間体の中に取り込んでおけば何らかのアレルギー反と関連する可能性は否定できません。
上に述べたような黄色色素や亜硝酸円などの場合を除いてはまだ不明の点が多いのが現状です。しかし、添加物は極力取らないようにしておくことが重要といえます。
 

⑧ストレスの問題


ストレスがアレルギーを引き起こすということは良く知られています。
有名なのは「バラ喘息」です。これバラの花粉を吸い込むと喘息発作の起きる人が造花のバラを見ただけで喘息発作を起こしてしまうという現象です。ここまで極端な例はアトピー性皮膚炎には見られませんがアトピー性皮膚炎の誘因の中ではストレスは重要な位置を占めています。
一般的にいうと、アトピー性皮膚炎の誘因は乳幼児期には食物アレルギー、年長児になるとチリダニの影響、そして思春期以降では精神的心理的ストレスのを占める割合が多いといわれています。特に近年 思春期以降および成人のアトピー性皮膚炎においてはこのストレスが誘因となっている場合も少なくはありません。このストレスは自分でいくら努力してもうまく行かない場合が多いのです。そのような場合にはカウンセリングを受けるということも有用な方法のひとつです。
 

⑨民間療法


アトピー性皮膚炎で悩んでいる患者さんが多いため、民間療法が数多く見られます。
なぜアトピー性皮膚炎が起きるのかいう点について不明の点が多く、アトピー性皮膚炎の決定的な治療法がないため、患者さんの医療に対する不信感が増大し、民間療法へ助けを求めるということはある意味では自然なことであるかもしれません。
私自身は民間療法を頭からから否定するつもりはありません。しかしながら、民間療法にはいくつかの欠点があります。
まず第一に 民間療法はその有効性について科学的な証明が乏しいのです。誰々さんが使って効いたというような情報とエピソードに基づいて広まっています。治療薬というのは患者さんの協力を得て偽薬と比較することによって初めてその有効性が証明されます。民間療法といわれているものにはこのステップを踏んでいるものはありません。
第2番目に 民間療法のあるものは非常に高価で、私たち医療関係者がはたから見ていると明らかに患者さんの弱みにつけ込んでいるというような利益追求が、第一目的の悪質なものも時には見られます。
しかし、それらの中には本当に有効なものがあるのかもしれません。今までずっと述べてきたようにアトピー性皮膚炎の原因にははわからない点が多く、また現在分かっているだけでも数多くのものがあります。そしてアトピー性皮膚炎の原因は患者さんひとりひとりによって大きく異なる場合が一般的です。
従って通常の治療法で良くならないから民間療法に頼るということは完全には否定すべきではないと思います。しかしながら1カ月に何万円もの費用が必要だったり、数ヶ月使っても効果がみられないというような場合にはサッサと中止する方が良いでしょう。

2014/8/13