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アトピー性皮膚炎



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 ステロイド外用薬(軟膏、クリーム)の塗り方

ステロイド外用薬(以下、ス薬と略します)の塗り方にはいくつかの方法があります。絶対にこうしなければいけないという方法はありません。患者さんに合う方法をとればよいのです。以下には私の考え方を説明いたします。
 
(1) 効いているものを(たとえば半年から1年間)ずっと塗り続ける方法。この方法は皮膚の赤み(炎症)を起こしている細胞を完全に押さえ込むというやり方です。皮膚の炎症を抑えるにはよい方法です。しかしながら、ス薬をなるべく塗りたくないという患者さんや、小児の患者さんの保護者にとってはこの方法は効くといっても、どうしても副作用が気になってしまいます。(2)では少し違う方法をご説明します。
 
(2) まず、皮膚の炎症を抑えるス薬を塗ります。皮膚の赤みが薄くなったら、塗るス薬をもう一段階、弱いものにします。それを数日使用し、赤みがぶり返さなければ、次のステップに入ります。それは普段使っている保湿剤(ワセリン、ヒルドイドソフトなど)を加えて、薄める方法です。ス薬を目分量で1手のひらにとり、保湿剤を1の量とります。両者を手のひらの上で混ぜれば、ス薬は半分に薄まります。これで数日間塗ります。ぶり返さなければ、次は1:2、にしましょう。
 
あまり薄めると効かなくなります。1:2くらいまで薄めたら、その後は1日に1回入浴後に塗ります。
 
一日1回で再発が無ければ2日塗り3日目は保湿剤のみにします(2投1休)。それで4,5日から1週間見て再発が無ければ、薄めたステロイドは1日おき(隔日)、さらにその後は1日塗ったらあと2日は保湿剤だけ(1投2休)というように薄めます。
 
面倒とは思いますが、ある意味では必要悪であるステロイドは徐々に減量するのが、急がば回れ!! なのです。
 
(3) ステロイドなしには専門医は皮膚炎の治療はできません。ステロイドは良く効くので、鋭い包丁のようなものです。ではこの包丁が殺人に使われたら、それは包丁のせいですか? 使用したヒトが悪いのは当たり前ですね。包丁に罪は無いのです。ステロイドも同じなのです。
 
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(4) ステロイドはこれなしには難しい病気の治療はできないくらい重要なお薬です。本来、体の中で作っている重要なホルモンです。これが無いと、ヒトは1分と生きてはいられないくらい重要なホルモンです。
 
私たち内科、小児科系の医師は難しい治りにくい病気にこれを内服薬として処方し、症状が良くなったら、」細心の注意をして、減量します。例えば一日5錠内服したら、次は4錠、3錠、2錠、1錠、隔日、、、、、と間隔をあけてゆくのです。
 
皮膚に塗る場合も同じです。上に述べたように徐々に減量しましょう。飛行機の着陸と同じです。急に高度を下げると(急にステロイドを減らすと)、地面に激突(皮膚炎は悪化)してしまいます。
 
(5) この段階までくればス薬を中止し、保湿剤だけでも何とか皮膚の炎症を抑えるようになります。
 
(6) 以上の方法が、すべて順調にいった場合です。実際は、減量中にさまざまな原因で皮膚の赤みがぶり返すことが多いのです。
 
その原因としては、
(A)風邪を引き抵抗力が落ちて、持病である皮膚炎がぶり返す。風邪いがいの誘引としては、過労やストレスがたまった場合です。
(B)夜間などつい皮膚を掻き崩してしまう。この原因としては成人ではお酒の飲みすぎがよく見られます。
(C)季節の変わり目の陽気の変化です。冬は湿度の低下はアトピー性皮膚炎の特徴のひとつであるドライスキンを悪化させます。一方、夏には汗のため、皮膚炎が悪化しトビヒ(ブドウ球菌)や溶連菌などをはじめとする細菌により皮膚炎が悪化します。
(D)環境の変化、たとえば引越しの前後はホコリぽく、なりがちです。その際には皮膚炎が悪化する場合があります。このように、さまざまの誘因があるため、せっかく減量したス薬をまた強くしなければならないことは、よく見られます。その場合は、せっかく薄めたのだからと言って、がんばらないで、一時期ス薬を前の強さに戻すことも、やむを得ません。前回も薄めることができたのだから今度も必ずできるのです!
 
(7) 患者さんによっては、弱いステロイドを1:9にすると、必ず再発することがあります。これは、皮膚の中の炎症を抑える細胞が、まだまだ元気なことを示しています。このような場合には1:9ではなく、1:2とか1;4まで減量し、その後は(4)のやり方で塗らない日を決めてゆけばよいでしょう。
 
(8) 最後に、皮膚炎は今のような方法で治療してゆくと、赤みが早くよくなる部位と、なかなかよくなりにくい部位が出てきます。これはごく自然のことなのです。これは子供の運動会の徒競走と同じです。よーい、ドン! で走り出しても、早い子と遅い子がいるでしょう。早い子は皮膚の炎症が治りやすい部位、遅い子は治りにくい部位なのです。治りにくい原因としては、肘や膝、足首、首の後ろの、いわゆる襟足、赤ちゃんならば、よだれや食べこぼしがたまるあごの下などが上げられます。どんどんよくなる場所は、サッサと減量、直るのに時間がかかる場所は、ゆっくり減量です。つまり、同じ薬で治療をスタートしても、その後の治り方により、臨機応変に変えます。部位により塗る薬の強さが変わるのは、ごく当然のことなのです。
 
(9) ちなみにアトピー性皮膚炎で使用されるステロイド外用薬といっても、(I群)strongest, (II群)very strong, (III)群)strong, そして(IV 群)mild があります。(4)でお話した減量(ステップダウン方式)は一般的には (IV 群)mild の強さの外用薬で行います。  (以上)
 
しかしながら1カ月に何万円もの費用が必要だったり、数ヶ月使っても効果がみられないというような場合にはサッサと中止する方が良いでしょう。

2014/8/13