家庭でできるアレルギー治療
都市生活とアレルギー
アトピー性皮膚炎の原因としては、乳幼児期では約20%が食物です。(ですからこの年齢の皮膚炎の原因を食物だけで説明しようとすると過剰診断になってしまいますのでご注意を)その後、年長になるにつれ、ハウスダストが全体の約10%弱を占めるようになります。思春期以降は心理的ストレスが大きな比重を占めてきます。特に成人発症型のアトピー性皮膚炎ではこのストレスの問題をいかにケアーするかが重要です。
(参考:食物アレルギーの診断手順、ハウスダスト、チリダニ対策はこのHPの病気の項目に説明がありますのでご参考にしてください。)
しかしながら、それら以外の原因のほうが多いのです。それは図を見ていただくと一目瞭然です。今あげた3大原因以外の部分が圧倒的に多いのです。
この部分に入るものの一つとしては、いわゆる生活の都市化に伴うさまざまな因子を無視することはできません。それらは、水(塩素、その他の消毒剤)、食品添加物、食生活の乱れ(動物性脂肪、リノール酸の摂取過剰)などは誰でも皮膚炎の原因として、怪しいと思っているものです。
上水道の水は殺菌作用のある塩素系の薬物が入っているための、都会の水はカルキ、塩素臭い、とよく言われるのです。(最近は水道局の努力のためか、カルキ臭さはだいぶ減ったようです。)この塩素が皮膚をガサガサにし、皮膚のバリアーを破壊するためにドライスキンをさらに悪くしてしまいます。どのように水から脱塩素をするかは重要な問題です。蛇口につけるフィルターは数千円ですので手軽ですが、効果は不十分です。水道管の元管に直接つけるマイナスイオンフィルターは20万―30万円しますので、効果は、かなり期待できるもののコストが問題です。ちなみにこのフィルターは取り外しできるのでお引越しのときに業者にとってもらい、引越し先で、またつけてもらえばよいのです。
スキンケアーのポイントは決して、垢すりをしないことです。皮膚を清潔にすることはきわめて重要ですが、一歩間違うと皮膚のバリアーを破壊してしまい、皮膚の炎症は悪化します。(皮膚のバリアーは重要です。スターウォーズでもバリアーが破られると負けてしまいますネ!)石鹸の選択も重要です、いわゆる固形石鹸で、色も香りも極力無いものにしましょう。界面活性剤の入っているボディーソープは避けましょう。生活クラブ、生協では昔ながらの石鹸に近い、またはそのものを販売しています。私の患者さんでモデルさんがいますが、その方は自分でバージンオリーブオイルを原料にして石鹸を作っています。(中学生か高校生の化学の時間に、作った方もいるはずです! 学校ではてんぷら油を使ったのでは?)
食品添加物を好んで食べる人はいません。他に方法が無いから、皆ヤレヤレ困ったものだと思いながら、あきらめて食べているのでしょう。その典型例が極度の多忙な若い人たちです。コンビニライフといわれるもので、極端な場合、3食すべてコンビで買う例もあります。その結果、さまざまな食品添加物を摂取してしまうのです。締め切りに追われるコンピュータグラファー、ゲームソフトをつくるコンピュータグラマー、そして深夜遅くまで仕事をする金融関係の人たち、シフト性で不規則な勤務体制の看護師さんたちや介護師さんなど、わかっていても便利なコンビニに依存する度合いが高くなります。このような方たちには、可能な範囲で自炊をするとか、手作りの定食屋さんなどを勧めています。
特にお子さんでスナック菓子を好んで食べる場合が問題です。できるだけ手作りのケーキなどを焼いてあげるとよいですね。最近はオーブンレンジなど簡単にケーキが作れるそうです!
動物性脂肪、リノール酸の摂取過剰も重要な問題です。戦後、日本人の食生活でもっとも大きく変化したものは、動物性脂肪とリノール酸の摂取量の増加です。これらはたんぱく質の摂取増加をはるかに上回っています。
1985年の国立公衆衛生院との共同調査では、水産庁の資料による魚の水揚げ量の多い漁港の児童5102人と山間部の児童2640人を対象とした調査により、魚を多く食べる郡には喘息が少ない(P<0.05)という結果が出た。さらに1995年に名古屋大学の鳥居らが、アトピー性皮膚炎の小児にアルファーリノレン酸、EPA, DHAなどのN-3系列の多価不飽和脂肪酸をふくむ粉末、商品名;イパオールの内服が有効であることをしめました(日本小児アレルギー学会雑誌 1995年)。また長期入院施設において、EPA、DHAを含む魚油を1年間内服すると、喘息にもよいことがわかりました(ヨーロッパ呼吸器学会雑誌、200年)。
このようにアルファーリノレン酸、EPA, DHAなどのN-3系列の多価不飽和脂肪酸はアレルギーに良い事ばかりに見えるので、すぐ明日からでもサプリメントを飲みたくなりますが、ちょっと待ってください。普通の食生活をしているヒトたちには極端なEPA,DHAなどの不足はまず無いのです。
当クリニックでは、食事日記を1ヶ月は記入していただき、私がチェックします。クリニックの栄養士さんに分析してもらう場合もあります。いずれにせよ、きちんと食事内容をチェックした上でEPAのサプリメントが必要であるかを決めましょう。何時でもご相談に乗ります。(以上)
成人になってはじめておきる成人発症型のアトピー性皮膚炎のかなり多くがストレスが主な原因であるケースが目立ちます。ストレスは1-2週間では体に対する影響はまずありませんが、数ヶ月以上続くと、ボディーブローのように徐々に効いてきます。ストレスは中枢神経系を介して、免疫系に影響が出て、その結果皮膚に皮膚炎、湿疹が出ると考えられています。
思春期になって軽くなった小児期のアトピー性皮膚炎が成人期に入って再発する別の原因としては、ハウスダストがあります。家庭にいる時代はママが一生懸命掃除をしてくれるのですが、大学生になって、または社会人になって、一人暮らしをするようになると、男の子の場合はまず自分から進んで掃除はしません(最近は女の子も?)。それどころか万年床、ベッドパッドは購入以来1度も洗わないなど、生活環境内のハウスダストの量は増えやすい状態です。このような場合には乗り込んできたママが大掃除をすると、皮膚炎がかなり良くなる場合もあります。これもある意味での都市生活でも問題とも言えましょう。
アレルギー疾患の各病気を説明していきます。