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アレルギーのお話


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 減感作療法のお話

 

(1) スギ花粉症と減感作

免疫療法の一つです。
そもそも1920年代からUSAで、花粉症(干し草花粉症)に対して行われました。以後数多くの臨床データが発表され、花粉症に対する有効性が確立しました。
 
経験的に、症状を起こさないくらいの微量を定期的(週1-2回)皮下注射します。スギ花粉症では、年末から開始し、徐々に注射量を増やします。4月末まで継続します。その後は2カ月おきに維持量で行います。年が開けたら、また1-2週間間隔で行います。通常2-3年行います。
 
ヒノキ花粉症も合併している場合は、スギ花粉症とヒノキ花粉症の原因蛋白質は共通なので、スギ花粉が飛び終わっても、ヒノキが終わるまで継続します。
 
通常は上記のような季節前減感作ですが、間に合わないときはスギ花粉のシーズン中からも開始します。これを季節中減感作といいます。それにより症状は軽減します。この治療法の問題点はしばらく毎週、来院しなければならないことです。
 
減感作は症状が安定した場合、どのくらいまで注射間隔を空けることが出来るのかという難しい問題があります。確実なデータはありませんが、唯一のデータは、広島のカキ業者に見られるホヤ喘息です。この場合、減感作の注射の間隔を年に4回よりも減らすと予防効果が減るというデータが城先生により報告されました。私はこれを参考にして、症状が治まってからの注射間隔を考慮しています。
 
スギ花粉症の患者さんにスギのエキスを注射するわけですから、わかりやすく言うと、毒をもって毒を制するとか、1種のワクチン療法ともいえます。ミズボウソウのワクチンと減感作が異なるのは、ミズボウソウワクチンは1回注射すれば、免疫がつきます。
しかし、スギ花粉症の方は、わかり易く言えば、鼻や目の粘膜の中の細胞がスギ花粉と仲良しで、すぐにくっついてしまうのです。これをブロックする抗体、これを遮断抗体といいます。減感作はこの遮断抗体を体の中から誘導するのです。
もうひとつのメカニズムは体内の細胞がアレルギーを抑える物質を産生して、スギ花粉が粘膜に付着してもそこの細胞が反応しないようにする、これを免疫学的寛容、ひと言でいえば反応しなくなる状態を誘導するのです。
 
# 全身反応を示すスギ花粉症と減感作
春になると、全身倦怠感、37度台の微熱が持続する、ぐったりするなどの症状があり、雨の日にはケロッとするような場合はスギ花粉が原因のことがあります。この場合は、内服薬は余り効かない場合が多く、減感作が有効です。
 

(2)喘息に対する減感作

20-30年前には喘息に対する減感作はよく行われました。ハウスダスト液で行います。
ハウスダストの主成分はチリダニです。ですからハウスダスト液よりも効くだろうということである時期にはチリダニで減感作を行いましたが、事故例があったためこれを製造している鳥居薬品が、チリダニエキスは本来、研究室での実験用であり、人体に使用する場合は安全性が確立していないので、臨床用に使用した場合はその結果については使用した医師に全責任があるという見解を出し、その結果、臨床的には、使用しにくくなりました。
現在は喘息に対するこの治療法はかなり減っています。
 

(3)減感作の副作用

スギ花粉症の人に原因物質を薄めて、慎重に注射するわけですから、アレルギー反応が誘発される可能性は否定できませ
ん。軽いものは注射部位の腫れ、ほてり、痛みなどです。その上の症状は全身のじんましん、鼻炎、結膜炎です。
さらに困るのは呼吸器に症状が出ることです。咳が出るときは気管でアレルギー性待の咳が起きているのです。
呼吸困難やゼイゼイ(喘息発作)が見られる場合は、すぐに治療が必要です。当クリニックはそのような場合、クリニック戻っていただくか、電話を入れていただきます。そこで、適切な対策をとれば問題ありません。要は、風邪をひいたと思って家で寝ていないようにすることです! 1時間以内の突然の体調不良は減感作の副作用をまず考えてください。
 

(4)舌下減感作

主にイタリアで行われています。舌の下に減感作液を垂らしたり、小さなパンの小片に減感作液をつけて、舌の下に挟みます。3分間のままにします。その後、パンをはきだします。
この方法はスギエキスを皮下注射するのに比べて、効率が悪いため、大量のスギ花粉エキスが必要です。口腔粘膜からの吸収も悪く、決して効率のよい減感作ではありませんが、ちゅうしゃを嫌がる小児や、注射法に比べると副作用がまずないので、その点は有用です。効果は注射法にかなわないのは、止むをえません。
米国、英国のアレルギー学会ではこの治療法の有効性には否定的です。日本では治験中です。
しかし、当クリニックでは幼児でどうしてもという保護者の希望があれば、上記のことを納得していただいたうえで行っています。現時点(平成22年4月)は保険がききません。
 

(5)食物減感作

原理はスギ減感作と同じです。食物アレルギーは除去試験、負荷試験で原因食物(食物アレルゲン)を決定すると、半年から6カ月の期間、原因食物を除去します。その後、また少量から食べさせて、症状が出ないことを確認してから、再び徐々に食べさせます。この除去期間中に体の成長に伴い、体に中の消化機能、免疫が発達(免疫学的寛容)し、また食べられるようになります。
しかしアナフィラキシーを起こす場合、除去期間が長期になり、中学性になっても牛乳や卵が食べられない場合も少なくありません。このような場合、2-3週間、入院して行います。
当クリニックでも、数年前から食物減感作を注意して外来と自宅で連携をとりながら行いっています。フレッシュなアナフィラキシーのケースでは行いません。
ある程度時間が経過(数年)すれば食物減感作が可能な状況になる場合が多いのです。
乳幼児は危険なので行いません。
小学校以降、成人のみ外来と自宅でおこなっています。小学生くらいになると食物により喘息発作が起きる程度の場合は、自宅での喘息発作に対する万全の策をとった上で行っています。
この食物減感作はリスクを伴うので絶対に経験のある専門医の指導のもとに行います。
このところ(平成22年春)にマスコミにこの食物減感作は掲載され大騒ぎになっています。しかしこの治療法はアレルギー専門医で食物アレルギーをケアーしている医師は、全国で数は少ないのですが、ケースバイケ―スで以前から行っています。  
 
以上

2014/8/15