
呼吸器内科
呼吸器内科
呼吸器内科で診療する病気は幅広く、一般的なかぜからインフルエンザなどの感染症、喘息、気管支炎、肺炎、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など多岐にわたります。さらに肺自体には異常を認めない睡眠時無呼吸症候群や禁煙のサポートなども行っています。そのため症状も幅広く、咳や痰はもちろん、胸痛や全身の倦怠感など様々な体調不良が診療対象となります。
呼吸器疾患の初期症状は、かぜと変わらないことが多いですが、その背景には喘息や肺炎など、重篤な病気が潜んでいることもあります。咳や痰などが続く場合は、自己判断をせず、呼吸器内科の受診をお勧めします。
日常的に起こりやすい症状でも、詳細な検査を行うことで重大な病気の早期発見・治療につながることもよくあります。気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
気管支喘息は一般的に「喘息(ぜんそく)」と呼ばれています。気道(口や鼻から肺につながる空気の通り道)に慢性的な炎症が生じ、様々な刺激に敏感になり、発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。大人では9~10%が喘息ともいわれ、ご高齢で発症する方もいます。
症状としては発作性の咳やたん、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)が出て息苦しくなります。咳だけの場合もあり、その場合は咳喘息とよばれます。また、夜間や早朝に発作が悪くなりやすいという特徴があり、時に呼吸困難を起こし、命にかかわることもあります。
原因としてはチリダニやハウスダスト、ペットの毛、カビなどのアレルギーによることが多いとされていますが、原因物質が特定できないこともあります。症状増悪の原因としては、アレルゲン、風邪などの感染、気圧の変化、寒暖差、冷気、ストレス、痛み止めなどの薬物、タバコの煙、黄砂、PM2.5など大気汚染物質、運動、月経、肥満、アルコールなど多岐にわたります。
診断には症状や既往などの詳しい問診、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素濃度測定、血液検査でアレルギー体質の有無の確認などを行い、総合的に判断します。咳のみでなかなか診断が難しい場合に気管支拡張薬を吸入して症状が改善するかなどの治療的診断も行うことがあります。
当院では、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素濃度測定、モストグラフ(総合呼吸抵抗測定装置)で検査を行うことができるため、長引く咳があったり、喘息が心配なかたなどはご相談ください。
喘息は、発作を繰り返すことで気道の状態が完全には戻らにくくなり、呼吸機能が低下してきたり治療への反応が乏しくなってきます。ですので、発作が起きていない普段の状態から、いかに発作が起きないように予防していくかがポイントとなります。毎日の吸入(吸入ステロイド)・服薬などの継続した治療を行うことが必要になりますので、診断がついた場合はしっかり向き合って一緒に治療していきましょう。
かぜは正式には「かぜ症候群」といって、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、痰などを主症状とする上気道(鼻やのど)の急性炎症の総称です。時に下気道までおよぶこともあります。発熱、咽頭痛、全身倦怠感、食欲低下などを伴う場合がありますが、発熱はあっても微熱程度で、頭痛や全身倦怠感などの全身症状も軽いという特徴があります。下気道まで炎症が及ぶと下気道症状(せき、たん)も出現します。
原因微生物の80~90%はウイルスが占めており、粘膜から感染して炎症を起こします。
ウイルス性のかぜ症候群であれば、安静、水分・栄養補給により自然に治癒するためにウイルスに効果のない抗菌薬は不要です。ときに細菌性の場合もあり、その際には抗菌薬が必要となります。しっかり治さないとその後、気管支炎や肺炎に進行する場合もありますので、治ったと思って無理をせず、完治するまで体を休めたり、治りが悪いときは早めに受診しましょう。
インフルエンザウイルスによる急性熱性感染症で、A、B、Cの3型があり、通常、寒い季節に流行します。感染が成立してから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、38℃以上の突然の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、咳、鼻汁、咽頭痛などの症状がこれらに続き、およそ1週間で軽快します。主な合併症としては肺炎、脳症が挙げられます。通常のかぜ症候群とは異なり急激に発症し、全身症状が強いことが特徴です。
季節性インフルエンザはいったん流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が拡がります。二次感染、合併症の予防のためにも、できるだけ早く受診することが大切です。
肺炎には細菌性肺炎とウイルス性肺炎、その他にも特殊な病原微生物(マイコプラズマ、レジオネラなど)や真菌(カビ)などの感染による肺炎があります。
また、感染を原因としない肺炎(間質性肺疾患、過敏性肺臓炎、好酸球性肺炎、薬剤性肺炎など)もありますが、ここでは感染による一般的な肺炎についてお話します。
市中(健康な人、軽微な基礎疾患のみの人)でおこる肺炎は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラなどの原因菌で起こることが多く、症状としては発熱、咳・たん、全身倦怠感や食欲低下、時に胸痛や呼吸困難感が生じます。ご高齢のかただと肺炎をおこしていてもこれらのような症状がはっきりしないこともあります。
ウイルス性肺炎はインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルスなどのウイルスが原因で起こり、一般的なかぜの症状に続き、激しい咳や高熱、倦怠感などの症状が現れる特徴があります
当院では、問診、身体所見、血液検査や胸部レントゲンなどで肺炎を疑う場合は抗菌薬で治療を行います。必要と判断した場合は、近くの医療機関と連携して胸部CTを施行することもございます。
また年齢や基礎疾患、呼吸状態を含めた全身状態から入院が必要な場合は、近隣医療機関と
連携し受診していただくこともございます。
普段から栄養の保持に心掛け、よく体を動かし、禁煙に努めることと、インフルエンザワクチンや
肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが、肺炎予防につながります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫とされてきた病気の総称です。主な原因はタバコといわれており、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。
気管支の炎症がおこり咳やたんが出たり、気管支が細くなることで空気の流れが低下します。また肺胞が破壊され肺気腫になると、酸素の取り込み、二酸化炭素の排出機能が低下します。これらにより身体を動かした時の息苦しさ、慢性的に続く咳、たん、喘息のような発作性呼吸困難といった症状が長期にわたって続き日常生活に支障をきたします。重症化すると呼吸不全や全身に障害が現れたりすることもあります。
早期に診断を受けて治療を開始すれば、呼吸機能の低下を少しでも食い止めることができます。COPDは全身の併発疾患も重要になってくることから、軽症のうちに発見して治療をはじめることが重要といえます。治療は禁煙、気管支を広げる吸入薬、内服薬、重症になってくると、在宅酸素療法が必要になる方もいます。また気道の感染で健康な方よりも重症化しやすいため肺炎球菌やインフルエンザの予防接種を定期的に受けることがとても大事です。
確定診断には呼吸機能検査が必要です。当院では検査が施行できますので、心配な方は来院してご相談いただければと思います。
細菌によって発症する肺炎とは違い、体内における自己免疫の働きで肺の細胞に炎症を起こすのが間質性肺炎です。間質性肺炎は最終的に肺の繊維化(硬くなる)を引き起こし、酸素が取り込みにくくなります。
症状は、乾いた咳、呼吸のしづらさ(階段昇降や歩いた時などの労作時)といった症状が目立ちます。重症のかたは、少し動いただけでも血中酸素飽和度(SpO2)が90%以下に下がります。
間質性肺炎には様々な原因があり、特発性(原因がはっきりしないもの)、過敏性肺臓炎(カビなどなにかしらの抗原を吸入した時の反応)、喫煙、膠原病性(リウマチなどの免疫の疾患を発症したときに二次的に生じるもの)、薬剤性(抗がん剤や漢方薬、心臓のお薬などによる副作用として生じるもの)などがあります。どの原因による間質性肺炎なのかで治療の方針が異なってくるため、問診など経過をお話していただくことが非常に大事になります。
診断にいたるまでの流れですが、聴診で特徴的な音を聴取した場合や、胸部レントゲン写真で両側に特徴のある陰影を認め疑った場合、CTで陰影の性状を評価します。血液検査で膠原病や間質性肺炎で上がる数値などを確認し、問診や身体診察で二次性の要因がないかを確認します。具体的には、服薬歴、吸入の機会を含めた職業歴、居住空間やペットの飼育歴、喫煙歴、膠原病を示唆する身体所見がないかなどを確認していきます。その後、専門の医療機関と連携して気管支鏡検査や外科的肺生検などをお願いする場合もあります。
治療ですが、原因がわかる場合は原因となる物質からの回避(薬剤中止、環境から離れるなど)を行います。呼吸の調子を確認しながらステロイドを用いることもあります。その他、特発性といわれる原因不明の間質性肺炎のなかには、予後の悪いものもあり、その場合には進行をすこしでも緩やかにするお薬(抗線維化薬)の内服をするかたもいます(一部膠原病肺の間質性肺炎にも使用することがあります)。体の酸素濃度(SpO2)が下がる場合には、在宅酸素療法を導入します。
体を動かした時の息苦しさや乾いた咳などの症状が気になるかたはお問い合わせください。
抗酸菌といわれる種類の菌のなかで、結核菌ではない抗酸菌が肺に感染して起こる病気です。土や水などの生活環境に広くいる菌で、結核菌とは異なり人から人には感染しません。結核という名前が入っているので、病名をお伝えするときに少し驚かれる方もいらっしゃいますが、「非」結核であり、人から人へ感染しない、というところが大きな違いかと思います。
菌の種類は150種類以上ありますが、非結核性肺抗酸菌症の80%がマック菌(アビウム、イントラセルラーの2種類の菌をあわせた呼び名)で、次に多いカンサシ菌が10%です。
女性にやや多く、年間約8,000人が発症します。肺結核が年々減少しているのに対して非結核性肺抗酸菌症は増加してきています。
主に浴室や土を扱う作業で空気中にただよう非結核性抗酸菌を吸い込むことにより感染すると考えられています。多くは数年から10年以上かけてゆっくりと進行します。
初期は症状がほとんどなく、健診の胸部エックス線検査などでたまたま発見されることもしばしばあります。せき、たん、血たん、だるさ、発熱、寝汗、体重減少などが出ることもあります。
胸部エックス線検査、胸部CT検査で特徴的な影、たんの培養で同じ菌が2回検出されれば診断になりますが、結果が出るまでに6週間程度かかることがあります。たんから2回以上同じ菌が出ることが必要なため、なかなか確定診断に至らないかたもいます。たんが出ない場合は気管支鏡検査というカメラの検査も必要な場合があります。その場合はクリニックでは難しいため、気管支鏡検査のできる施設にご紹介することとなります。
症状や肺の影が悪化してくる場合には患者様の状態を見ながら抗菌薬による治療をおこないます。病型や体重、御年齢などでも内容は少し変わりますが、基本的には3種類の抗菌薬を毎日内服します。服用期間は長期にわたり、少なくとも菌が培養されなくなってからも1年間以上は続ける必要があります。
肺結核と異なり人から人へは感染しませんので、社会生活は特に制限ありません。ただ、ご自身の再感染を防ぐためにも、自宅の中で非結核性抗酸菌が増殖しやすいとされるお風呂場(シャワーヘッドも含め)など、定期的にしっかり清掃、乾燥させるようにしましょう。また、24時間風呂は菌の温床になる可能性があり、使用を控えましょう。土の中に菌がいるため、ガーデニングや家庭菜園はできれば控えましょう。行う場合には、マスクを着用しましょう。
それでも、残念ながら菌が完全に消えることはまれであり、治療終了後も再発しないか定期的に胸部エックス線検査やCT検査を行っていきます。
長い付き合いになる病気ですので、信頼できる医療機関での経過観察や治療をおすすめします。当院では胸部レントゲン、近隣医療機関連携でのCT検査による経過観察やある程度の加療は可能ですが、診断が難しく検査が必要な場合や難治の場合などは必要に応じて専門の医療機関へのご紹介をいたします。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まり、さまざまな合併症をおこす病気です。10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間に5回以上繰り返される状態をいいます。
自覚症状としては、いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などがあります。
睡眠中に低酸素状態となり、それが毎晩、年単位で起きれば、心臓・血管系の病気や多くの生活習慣病と関連してきます。高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性は約3~4倍高くなり、特に重症例では、心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなるとされています。
無呼吸の回数が多い場合は経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous posi-tive airway pressure:CPAP)で治療を行います。CPAPはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。この治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。
問診などでSASが疑われる場合は、ご自宅でできる携帯型装置による簡易検査を行います。さらに詳しく調べる必要がある場合、他の医療機関へご紹介して睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。できるだけ早く治療を始めることをお勧めします。
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